物忘れをどうにかしたい? | 年齢による物忘れと認知症の違いを鍼灸師が考える
初稿 2025年8月14日
最終加筆 2026年1月13日
最近、物忘れがひどくなったと感じる方へ
年齢を重ねてくると、誰でも一度は思うことではないでしょうか。
私自身も、正直に言えば「前より忘れっぽくなったな」と感じる場面はあります(笑)。
物忘れと認知症の違いはどこにあるのか
一般的には、「物忘れ」と「認知症」は違うものだと言われます。
その定義は医学的にはなかなか複雑で、ここで細かく説明することはしませんが、臨床の現場で私がよく感じるものがあります。
臨床で感じる一つの目安
それは、
・自分で「忘れている」と自覚できている状態は「物忘れ」
・自覚そのものが難しくなっている状態は「認知症」
という違いです。
物忘れの段階で不安を感じる理由
だからこそ、「物忘れ」の段階にいる人ほど、
「このままひどくなったらどうしよう」
「もしかして、将来は認知症になってしまうのでは……」
そんな不安が頭をよぎるのだと思います。
その気持ちは、とても自然なものです。
私自身も、同じように考えることがあります。
物忘れの段階でできることはあるのか
では、「物忘れ」の段階で、何かできることはないのでしょうか。
ここでは、鍼灸という立場から考えてみたいと思います。
物忘れは病気なのか?
まず知っておいてほしいのは、いわゆる「物忘れ」は、多くの場合で病気とまでは言えない状態だということです。
病気とそうでない状態の違い
少し別の例えをしてみましょう。
「記憶」を「走ること」に置き換えてみます。
まったく走れない状態であれば、それは何らかの病気かもしれません。
一方で、「昔ほど速く走れなくなった」という状態は、必ずしも病気とは言えません。
単に練習していなかった、体調が良くなかった、疲れが抜けていなかった――
そういう理由でも、走るスピードは簡単に落ちてしまいます。
物忘れに対して必要な考え方
もしこの例えで、
「走れなくなった状態」を認知症、
「走れるけれど、以前ほどではない状態」を物忘れ、
と仮に分けるとしたら、
物忘れに対して必要なのは、「治す」というよりも、
本来持っている脳の働きが、きちんと発揮できる状態を整えることだと考えられます。
東洋医学から見た記憶と身体の関係
東洋医学では、記憶という働きは、主に「脳」と「心」が関わっていると考えます。
そして、その働きを支えているのが「血」です。
さらに言えば、「脳」や「心」に気血がスムーズに巡っていることが、とても重要になります。
加えて、気血が巡る“場”としての身体そのものが、
無理なく循環でき、臓腑がきちんと働ける状態である必要があります。
ここまでは、あくまで理論的な話です。
鍼灸臨床でよく見られる二つの状態
では、実際の臨床ではどうか。
私が「物忘れ」を訴える方を診ていて、よく目にするのは、主に次の二つです。
① 頚部の強い筋緊張
一つ目は、頚部の筋緊張が非常に強いこと。
首や肩が常にこわばっていて、頭部への血流が十分とは言えない状態です。
② 血液の状態が良くない
二つ目は、血液の状態があまり良くないこと。
量だけでなく、質の面でも、脳の働きを十分に支えられていない印象を受けることがあります。
ただし、ここで注意してほしいのは、あくまで「物忘れ」の段階の話だということです。
認知症の方にも似た状態は見られますが、今回は同じものとしては扱いません。
頚部の過緊張と鍼灸
頚部の過緊張については、鍼灸が力を発揮しやすい分野だと感じています。
実際、私自身も首まわりにはよく鍼をしますが、施術後に頭がすっきりする感覚がはっきりあります。
血液の状態への取り組み方
一方、血液の状態については、東洋医学的な診察を行わなければ、
どの臓腑や経絡、どの身体の状態を整える必要があるのかは判断できません。
そして、この部分は即効性を期待するものではなく、
中長期的に取り組んでいく必要のある領域です。
物忘れと生活習慣の関係
食事、運動、睡眠――
そうした生活習慣を見直しながら、少しずつ身体の状態を整えていく。
その積み重ねが、結果的に「物忘れ」に影響してくることは、決して少なくありません。
最後に
「物忘れ」は、誰にでも起こり得るものです。
だからこそ、不安になる前に、自分の身体が今どんな状態なのかを知ること。
そこから始めても、遅くはないのかもしれません。